毎日のように犬猫の薬を手に取っていると、その扱い方について特に意識しないまま、素手でつまんだり、割ったりしている飼い主さんも多いのではないでしょうか。実は薬の種類によっては、飼い主さん自身の安全のために、取り扱いに気をつけたほうがよいものもあります。この記事では、犬猫の薬を素手で扱うときに知っておきたい注意点を、薬剤師の立場から紹介します。毎日のことだからこそ、正しい知識を持っておきましょう。
薬によっては、扱う人の体にも影響が及ぶことがある
動物用の薬の中には、皮膚から吸収されやすい成分を含むものや、扱う人が繰り返し触れることで体調に影響が出る可能性がある種類のものがあります。特に、ホルモンに関わる薬や、抗がん剤に分類されるような薬は、動物病院でも取り扱いに注意しているカテゴリです。こうした薬を人が繰り返し素手で触ると、意図せず皮膚から成分を吸収してしまうおそれがあるため、注意が必要とされています。「ペットのための薬だから、人には関係ない」と思い込まず、渡された薬がどのような取り扱いを推奨されているか、処方を受けるときに確認しておく習慣をつけておくと安心です。動物病院や薬局でも、こうした注意が必要な薬については、説明書やお薬袋にその旨が記載されていることが多いので、見落とさないようにしましょう。少しでも不安に感じる記載があれば、自己判断で終わらせず、その場で薬剤師や獣医師に質問してみてください。
錠剤を割る・砕くときに気をつけたいこと
体格に合わせて薬の量を調整するために、錠剤を割ったり砕いたりする指示を受けることがあります。この作業を毎回素手で行っていると、粉末が指先に付着し、そのまま口や目を触ってしまうことで、意図せず体に入ってしまう可能性があります。錠剤を割る専用のカッターやピルクラッシャーを使う、作業のあとは必ず手を洗う、粉が飛び散らないよう平らな場所で作業するなど、ちょっとした工夫で扱う人自身の安全性を高めることができます。特に、妊娠中の方や、小さなお子さんが薬の準備を手伝う場合は、より注意して扱うようにしましょう。使い捨ての手袋を使う、という方法も選択肢のひとつとして覚えておくとよいでしょう。頻繁に錠剤を割る必要がある場合は、動物病院に相談して、あらかじめ割った状態や小さいサイズで処方してもらえないか聞いてみるのもひとつの方法です。作業する場所を毎回同じ台にしておくと、粉が飛び散っても気づきやすく、清掃の習慣化にもつながります。作業後は台をさっと拭き取るところまでをワンセットにしておくと、粉の飛散にも気づきやすくなります。
薬を扱ったあとの手洗いを習慣にする
薬の種類にかかわらず、犬猫に薬を飲ませたあとや、薬を準備したあとは、手を洗う習慣をつけておくことをおすすめします。皮膚から吸収されやすい成分を含む薬はもちろん、そうでない薬であっても、口に運ぶ手についた薬の粒子を意図せず摂取してしまうことは避けたいものです。特に、塗り薬や点耳薬など、直接皮膚や患部に触れて使うタイプの薬を扱ったあとは、いつも以上に丁寧に手を洗うようにしましょう。小さなお子さんが投薬を手伝ってくれる場合は、大人がそばで見守りながら、同じように手洗いを習慣づけてあげてください。塗り薬を塗った直後の皮膚を、しばらく人が触らないようにする配慮も大切です。石けんを使ってしっかり洗い流すことを、家族みんなのルールにしておくと安心です。
保管場所にも人への配慮を
薬の保管というと、犬猫が誤って口にしないようにすることを意識しがちですが、人、特に小さなお子さんの誤飲を防ぐという視点も忘れずに持っておきたいところです。ペット用の薬であっても、見た目やにおいによっては、お子さんが興味を持ってしまうことがあります。手の届かない場所、あるいは鍵のかかる場所で保管し、薬を出しっぱなしにしないことを習慣にしましょう。取り扱いに特に注意が必要な薬を処方されたときは、保管方法についても具体的に動物病院や薬剤師に確認しておくと安心です。使い終わった薬や余った薬の処分方法についても、自己判断で家庭ごみに出さず、動物病院や薬局に相談することをおすすめします。
家族みんなで取り扱いのルールを共有する
投薬を担当するのが飼い主さん一人だけとは限りません。家族の誰かが代わりに薬を準備したり、与えたりする機会もあるでしょう。取り扱いに注意が必要な薬がある場合は、その情報を家族みんなで共有しておくことが大切です。「自分は大丈夫だと思っていた」という思い込みから、注意が必要な薬を無防備に扱ってしまうケースもあります。お薬手帳や説明書を家族が見やすい場所に置いておく、簡単なメモを冷蔵庫や薬箱に貼っておくなど、誰が扱っても同じように注意できる仕組みを作っておくと安心です。
ペットシッターや預け先にも伝えておきたいこと
旅行や外出でペットシッターに投薬をお願いしたり、ペットホテルに預けたりする場合も、取り扱いに注意が必要な薬があれば、その旨を具体的に伝えておきましょう。口頭だけでなく、簡単な説明を書いたメモを薬と一緒に渡しておくと、伝え漏れを防ぎやすくなります。慣れていない人が扱う場面では、飼い主さんが普段意識している注意点が伝わっていないこともあるため、念のため多めに情報を共有しておくと安心です。預け先から質問があった場合は、遠慮せず動物病院に確認するよう伝えておくとよいでしょう。薬の受け渡しをするときは、口頭の説明だけに頼らず、必ずお薬手帳や説明書を一緒に渡すことを習慣にしておくと、より確実に伝わります。慣れない環境でその子がストレスを感じているときは、投薬のタイミングもいつも以上に丁寧に伝えておくと安心です。
まとめ
犬猫の薬の中には、扱う人の体にも配慮が必要な種類のものがあります。錠剤を割るときの工夫や、扱ったあとの手洗いを習慣にすること、保管場所に人への配慮も持たせることは、どれも飼い主さん自身とご家族を守るための大切な習慣です。気になることがあれば、処方を受けるときに遠慮せず動物病院や薬剤師に確認してみましょう。気になる症状や薬のことは、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
