「犬や猫の塗り薬、正しい使い方が分からない」「塗ってすぐ舐めてしまって、ちゃんと効いているのか心配」——皮膚のトラブルで塗り薬(外用薬)を渡されたとき、多くの飼い主さんが同じ不安を抱えます。結論から言うと、塗り薬は塗る場所・量・タイミングを守ることと、塗った後に犬や猫が舐めたりこすったりしないよう工夫することの、両方をセットで行うことが大切です。この記事では、薬剤師の立場から、犬や猫の塗り薬の正しい塗り方と、舐めてしまうときの対処法、他のペットや家族が触れないようにする注意点まで、まとめてお伝えします。
犬・猫の塗り薬(外用薬)とは、どんな薬?
動物病院で処方される塗り薬は、皮膚のかゆみや赤み、傷、細菌や真菌(カビの仲間)による皮膚のトラブルなど、皮膚そのものに直接働きかけたいときに使われます。飲み薬が体の中に取り込まれて全身に効果を届けるのに対して、塗り薬は患部にとどめて集中的にケアできるのが特徴です。よく使われるタイプとしては、炎症やかゆみを抑えるもの、細菌の増殖を抑えるもの、傷の治りを助けるものなどがあります。どのタイプの薬にも共通するのは、「決められた場所に、決められた量を、決められた回数」塗ることではじめて効果を発揮するという点です。自己判断で塗る回数を増やしたり、逆に良くなった気がして早めにやめてしまったりすると、期待した効果が得られなかったり、皮膚の状態がぶり返してしまったりすることがあります。処方されたときに、塗る回数や続ける期間について確認しておくと安心です。
塗り方の基本の手順
塗り薬を上手に塗るには、いくつかのコツがあります。次の手順を意識してみてください。
- 塗る前に手をよく洗う。人の手についた雑菌が患部に触れるのを防ぐためです。
- 患部の周りの毛を指でそっとかき分け、皮膚が見える状態にする。毛の上から塗ると、薬が皮膚まで届きにくくなります。
- 指示された量を、患部にうすくのせるように塗る。厚く塗りすぎても効果が増すわけではなく、かえってベタつきが気になって舐める原因になることがあります。
- 塗った後は、数分ほどそのままの体勢で落ち着かせる。薬がある程度なじむまで、なでたりおやつをあげたりして気をそらしてあげると良いでしょう。
- 塗った場所と時間をメモしておく。複数の場所に塗る薬や、1日に何度も塗る薬の場合、「塗り忘れ」や「塗りすぎ」を防げます。
顔まわりや自分では届きにくい場所は、無理に一人で押さえ込もうとせず、ご家族に手伝ってもらうと、犬や猫にとっても負担が少なくなります。
塗った直後に舐めてしまう・こすってしまうときの対処法
塗り薬を使ったとき、多くの飼い主さんが直面するのが「塗った瞬間に舐めてしまう」「体を家具にこすりつけてしまう」という悩みです。犬や猫にとって、いつもと違う感触やにおいのするものが体についていれば、舐めたりこすったりして取り除こうとするのは自然な行動です。とはいえ、舐め取ってしまうと薬が皮膚にとどまる時間が短くなり、十分な効果が期待できなくなるだけでなく、口に入った薬の成分でお腹の調子を崩してしまうこともあります。舐める・こする行動を防ぐ工夫を、その子の体調や性格に合わせて取り入れてあげましょう。
対処法 | ポイント |
|---|---|
エリザベスカラー | 塗った部位に口や舌が届かないようにする、もっとも確実な方法です。装着する時間は獣医師の指示に従いましょう。 |
術後服・エリザベスウェア | 体幹部の傷やかゆみに向いています。カラーが苦手な子でも比較的ストレスが少ないことがあります。 |
塗ってすぐ気をそらす | お気に入りのおもちゃや軽い遊びで数分だけ意識をそらし、薬がなじむ時間を稼ぎます。 |
塗るタイミングを工夫する | 散歩や食事の直前など、その後すぐ他のことに気持ちが向く場面に合わせて塗ります。 |
爪や被毛を短く整える | こすったときの皮膚への傷を減らせます。舐める行動自体の防止にはなりませんが、悪化を防ぐ助けになります。 |
対処してもなかなか舐めるのをやめない場合や、患部を気にして眠れないほど痒がっている場合は、無理に我慢させ続けずに獣医師に相談してください。塗り方や薬の種類を見直してもらえることもあります。
他の子や家族が触れてしまわないように気をつけたいこと
何匹かのペットと一緒に暮らしているご家庭では、治療中の子だけでなく、一緒にいる他の犬や猫にも気を配ってあげたいところです。動物同士は仲が良いほど、お互いの体をなめ合う「グルーミング」をする習慣があります。塗ったばかりの薬を仲間になめ取られてしまうと、効果が薄れるだけでなく、なめた側の子の体調にも影響することがあります。塗った直後は、できれば別の部屋で少し過ごしてもらう、目を離さないようにするなど、時間を区切って距離を取ってあげると安心です。また、薬を塗った手で、そのまま他のペットや小さなお子さんに触れないようにしましょう。塗った後は石けんでしっかり手を洗い、薬のチューブや容器も、子どもや他のペットが触れられない場所にしまっておくことが大切です。誤って口にしてしまうと、思わぬ体調不良につながることがあるため、保管場所にも気を配ってあげてください。
飲み薬とは違う、塗り薬ならではの管理のコツ
塗り薬は飲み薬と違って、皮膚に直接触れるものだからこその注意点があります。まず保管場所です。直射日光や高温多湿を避け、指示があれば冷蔵庫で保管するなど、パッケージや説明書の指示に従いましょう。次に、「同じ症状だから」と、別の犬や猫、あるいは体の別の場所に自己判断で使い回さないことです。皮膚の状態や体重、動物の種類によって、合う薬の種類や量は異なります。良かれと思って使い回した結果、かえって皮膚の状態を悪化させてしまうこともあるため、気になる症状が新たに出たときは、そのつど獣医師に相談してください。また、複数の塗り薬を同時に使う場合、塗る順番や間隔によって効果が変わることがあります。自己判断で混ぜて塗ったり、市販の保湿剤などを重ねて使ったりする前に、獣医師や薬剤師に確認すると安心です。開封後は品質が変わりやすいものもあるので、使用期限だけでなく、においや色、テクスチャーに変化がないかも、使うたびに確認する習慣をつけておきましょう。
まとめ
犬や猫の塗り薬は、決められた場所・量・回数を守って塗ることと、塗った後に舐めたりこすったりしないよう工夫することの両方が揃って、はじめてしっかり効果を発揮します。エリザベスカラーや術後服、塗るタイミングの工夫など、うちの子に合った方法を見つけてあげましょう。また、他のペットや家族が誤って触れたり口にしたりしないよう、保管場所や塗った後の過ごし方にも気を配ってあげると、より安心です。
気になる症状や薬のことは、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
